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■ 農林水産委員会での質疑の模様 2001年6月13日 |
○後藤(茂)委員 後藤茂之でございます。 きょうは、林業の健全な発展の関係、林業労働の件とか、あるいは木材産業とか国有林野のことにつきまして質問を少しさせていただきたいというふうに思っております。 まず、総論的な話ですけれども、今回の基本法の十九条に「望ましい林業構造の確立」という条文が起こされておりまして、改めて読むまでもないかもしれませんが、「国は、効率的かつ安定的な林業経営を育成し、これらの林業経営が林業生産の相当部分を担う林業構造を確立するため、地域の特性に応じ、林業経営の規模の拡大、生産方式の合理化、経営管理の合理化、機械の導入その他林業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるものとする。」としているわけです。 旧林業基本法には、十二条に、林業経営の近代化だとか、あるいは小規模林業経営の規模の拡大とか、あるいは同じ十五条においては、これも小規模林業経営の規模拡大あるいは経営基盤の整備に係るような条文がありまして、所得の増大や地位の向上という観点から、正面から条文がありまして、これらは今回の基本法においては削除をされているわけであります。もちろん、「林業経営の規模の拡大、」という文言は十九条にも実を言うと入っているわけでありますけれども、しかし、ここで相当明確に理念の違いが浮き彫りになっているというふうに思います。 また、森林法の一部を改正する法律案においても、今回、森林施業計画の作成単位となる森林を見直して、森林施業計画を一定のまとまりのある森林、三十ヘクタールぐらいを対象としていく、そういう改正案が出されておりますし、作成主体に、所有者に加えて、受託等により森林所有者にかわって森林の経営を行う者というものが加わっている、そうしたこともそういう流れにあるのだろうと思います。 小規模な林業経営者を中心として起こっている今の林業の非常に危機的な実態の変化に対応して、森林の管理の視点からの施策の推進だとか、あるいは林業生産組織の活動の促進とか、そうした新しい施策の枠組みが前面に出て示されている、その点については非常に評価するところであります。 せっかくこうした政策理念を明確にしているわけですから、今後、林業のそれぞれの具体的施策をしていく場合に、こうした理念の筋道に従って政策を着実に具体的にやっていくべきだ、政策のターゲットをしっかり絞ってやっていくべきだというふうに思いますけれども、大臣の御決意を伺いたいと思います。 ○武部国務大臣 後藤先生は、本問題については非常に造詣が深い方でございまして、この基本法につきましても、細部にわたりまして御検討いただき、今は非常に温かい御支援の弁だ、このように受けとめた次第でございます。まず、このことに敬意を表したいと思います。 御案内がありましたように、林業は国民生活に不可欠な資材である木材を供給するのみならず、森林の多面的機能の発揮にも重要な役割を果たしている産業でもあると私ども認識しております。 しかし、昨今、木材価格の低下や経営コストの増大等によりまして、林業の採算性が悪化している、そのために非常に今苦境に立っているという実情にあるわけであります。したがいまして、今後とも林業再生ということに向けて、育成すべき担い手の明確化、施業や経営の促進、経営コストの削減、地域材の流通、加工の合理化、需要の開拓等を通じまして、林業の健全な発展に力を尽くしていかなければならない、かように考えているわけでございます。 このために、基本法に基づく森林・林業基本計画には、林業・木材産業の関係者の課題というものを明らかにしつつ、林産物の供給及び利用の目標を掲げるということが非常に大事でありますし、政府としても講ずるべき施策を総合的に検討し、これを盛り込み、その展開を図ってまいりたい、この法律はそのことを明確に意思を明らかにしたもの、このように考えているわけでございます。 ○後藤(茂)委員 政策は、やっていけば、何でもやりたい、何でもやった方がいいということになりがちでありますけれども、やはり国の政策というのは筋に従って必要なところに重点的に行っていくということが全体としての政策の筋道をつけていくことだろうというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。 それから次に、林業労働について伺っていきたいと思いますけれども、林業労働力は、御承知のようにどんどん減ってきまして、昭和五十年には二十二万人だったものが、平成七年には九万人、平成十二年の調査では七万人ということになってきております。 林業労働力の確保の促進に関する法律に基づきます改善計画というのも出ていまして、それなりに労働力を増加させて、前向きな取り組みもなされているんだろうというふうに思います。しかし、高齢化やさまざまな労働条件のもとでの退職という形で、全体としてどんどん減少してきている。これは、将来的に日本の山を守っていくということからいえば大変大きな問題だ、非常に深刻な事態だと思っているわけです。 しかし、問題なのは、例えば現場の森林組合や事業体の段階で労働力が不足しているというふうに本当に認識をしているかというと、実を言うとそれほど人手不足だと現場では思っていないんです。これはどうしてかというと、これは当たり前のことですけれども、要は山の仕事が減っているということ、山を維持するために必要な事業量が確保されていないからこういうことになっているのではないかというふうに思うわけです。 そういう観点から、今後日本の山を守っていくためにどれほどの林業労働が必要と考えられるのか。もちろん、強制的に、計画的にどうこうするというわけにはいきませんけれども、そういう林業労働の目標をまず政策体系の中で設定するということが非常に重要になってくると思います。 それで、林業労働の目標を設定するに当たって、通常は伐採量に応じて、切ると植えつけをし間伐をしていくという形で林業労働を算定していくということだろうと思います。ですから、全国森林計画で伐採量が何千万立米になるのかということでそれなりに決まっていくことになるでしょうけれども、しかし、前回も御指摘申し上げたように、今の山の現況ということからいえば、相当に荒れていたり、実を言うと放置されているところもたくさんあるわけでありまして、そういう過去において積み残している分や、あるいは放置されている分も含めて、どれだけ林業労働が必要であるのかという点についても十分配慮していただきたい。 それから、一方では機械化とか技術革新だとかいろいろなことが進んでいく中で、労働生産性を上げる、林業の効率化を図っていくという枠組みの中でも、一体どれだけの金をかけてどれだけの林業労働というものが必要であるのか、そうしたことをしっかり体系の中で位置づけていくべきだろうというふうに考えております。 林業労働の数値化を考えていくべきだと思いますが、いかがでございましょうか。 ○武部国務大臣 おっしゃるとおり、将来必要となる林業労働力の見通しにつきましては、将来の森林資源状況等がどうなるのか、こういったことを踏まえ、今後予想される機械化の促進による生産性の向上等を念頭に置いて、基本計画を策定する中で明らかにしてまいりたい、かように考えているところでございます。 細かい部分については林野庁長官に説明、答弁させてよろしいですか。それでは、長官に答弁させます。 ○中須政府参考人 基本的にはただいま大臣が申し上げたところに尽きるわけでございます。 現在の七万人の林業労働力というのは、現場での実感として決して人手不足ということではなくて、むしろそういう各事業体等が求人等をすれば、データでいえば五割以上の事業体で求人数を上回る応募があるというふうな状況でありまして、十分そこはそういう意味でいえば充足されているとなるわけでありますが、実はその裏には森林の整備というものが非常におくれている、それを前提とした数字ではないかということを我々は忘れてはならないと思います。 そういう意味におきまして、大臣からただいま申し上げましたように、これから先そういったおくれをどう取り戻して現実の森林整備として取り組んでいくのか、そういうことを明らかにする中で必要な林業労働力の姿というものを明らかにしていく、こういう考え方で取り組んでいきたいと思います。 ○後藤(茂)委員 今大臣からも長官からも話がありまして、数値目標は決めていくというお言葉があったように思いますけれども、具体的に森林整備の基本計画の目標の中で、それはいろいろなケース分けみたいなものもあるのかとも思いますけれども、数値目標を書くべきだと私は考えますけれども、森林整備の基本計画の目標の中に書くかどうかということについてはいかがでしょうか。 ○中須政府参考人 基本計画の数値目標自体につきましては、法律上、計画事項というか、こういう事項について定めよということで掲げられているわけであります。ただ、ただいまの林業労働力等について、想定される森林の姿ということを前提にしてどのような労働力の確保が必要なのかということ自体は、施策の分野として数値を検討するのか、もう少し時間をいただいた上で、明示していく方法を含めて私どもも検討させていただきたいと思います。 ○後藤(茂)委員 例えば民間の非常に成熟した山の場合、民間というのは民有林で、長く手を入れてきて、そういうようなところでは例えば一人で百ヘクタールぐらいを面倒見ているところもある。これはもちろん、非常に安定した成熟した山があってそこに作業道が細かく張りめぐらしてあって、そういう非常に整った条件のもとでの山ということになりますけれども、そういうような整備の問題等もあるでしょうし、なかなか難しいことだろうと思いますけれども、そういう意味で、積み上げで必要な労働力の合計が目標であるというようなことにならないようにぜひお願いをしたいというふうに思います。 それから、次に移りますけれども、林業労働に関する施策につきましては、現行林業労働力の確保の促進に関する法律、労確法というのがありまして、しかし、いろいろ話を聞いて勉強したり議論していく過程で、特に目新しい切り口が少し見えていないのではないか、率直に言ってそういう感じを私は持ちます。 もちろん、幅広い観点からいえば、山村における定住の促進策だとか多面的機能の発揮に関する施策というもの、これは林業労働対策としては非常に大きな意味では重要なものであると思います。しかし、従来からの林業労働力確保支援センターの活動を拡充するとかいうこととともに、新しい全体としての林業労働にかかわるトータルな今申し上げたような幅広い意味での政策の調整も含めて、支援センターの具体的な施策の見直しをトータルに図っていくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○中須政府参考人 林業労働力確保支援センターにおきましては、現在、就業準備等に必要な資金の貸し付けをする、あるいは事業主の委託によりまして就業者の募集を行う、あるいは高性能林業機械を事業主に貸し付ける、こういった事業を中心として取り組んでおりまして、林業への新規参入そして事業体の雇用の改善等を促進している。これらは大変地道な仕事であります。 ただ、具体的な数値で御説明するとわかりやすいわけでありますが、これらの事業を通じてかなりの改善が図られてきている。毎年、林業就業促進資金の貸付件数というものは着実に増加をしておりますし、高性能林業機械の台数も増加をしている、それと支援センターによる委託募集の実績ということもかなりの人員が実現している、募集の実績としては増加をしているということで、それなりの成果を上げているというふうに思っております。 ただ、これからの課題といたしまして、都市部からの参入とか定着促進のためには、個別の労働力確保支援センターだけということではなくて、もう少し全国にわたる就業情報のネットワークというものを整備する、そういうことであるとか、今回の法改正を契機といたしまして、林業の技術、現場の技術というのも、多面的機能発揮のための森林整備というところに焦点を当てた知識、技術というものの習得の機会をつくるというふうなこと、そういう新しいニーズに対応した適切な対応というものをこういう確保支援センターが図っていけるように我々としても努力をしていきたい、こういうふうに考えております。 ○後藤(茂)委員 そういった新しい政策も考えておられるということであれば、労確法の基本方針、これについても見直しを行うべきだというふうに思いますけれども、その見直しもされるということでよろしいですね。 ○中須政府参考人 現行の労確法の基本方針は、私どもと厚生労働大臣との共管ということで平成八年に策定をしたものでございます。これは、現在改めて読み返してみましても、現在置かれている林業労働力の確保をめぐる状況にそれなりに的確に対応する方針が示されているのではないか、私どもはそういうふうに基本的には考えておりますが、基本計画という形での数値目標を含めた施策の方向全体、新しい取り組みが行われるわけでございます。 そういう意味におきましては、基本方針を含む施策のあり方について、当然基本計画が策定された段階でもう一回見直し検討をしていく、こういうことになろうかと思います。 ○後藤(茂)委員 今、Iターンをする若い人たちが結構マスコミなんかでも取り上げられておりますけれども、Iターンをしてくる人たちの新規の数あるいはその後の定着率というのは今どうなっているでしょうか。 ○中須政府参考人 これは私どもが、先ほど来お話になっておりますセンター等を通じました各種の事業を実際にやっておられる方々、あるいは個別就業者の方々へのアンケートを行ったその調査結果、十一年度に行ったものでございます。これによりますと、過去五年間に新規に林業に就業された方の一七%がIターンによるもの。ちなみに、地元の方がそのままその地元で新規就業されているのが六〇%というふうな中で、県外からのIターン者が一七%を占めている、こういう経過がございます。 それから、そういったIターンの方を含めた新規就業者全体の定着率というのが、過去五年間に新規就業された方のうち、調査時点で在職されている者がどのくらいいるかということを調べた結果では、回答のあった中では七五%の方が定着をしている、こういう結果が出ております。Iターン者に限って定着率がどうかということについては、申しわけございませんが、ただいまの調査の中では個別にはしてございません。 ○後藤(茂)委員 私は、定着率七割ということを伺うと結構高い数字だなというふうに思いますし、支援センターの委託募集の具体例なんかをちょっと聞いてみると、結構委託募集に対して七、八倍も人が来ることもあるというふうに聞いていまして、これから、自然と共生しようとか森林の中で生きようとか、そういう方たちも非常に多くなってくると思います。 そうした中で、Iターンというのがふえたり、あるいは新規に帰ってくる方、Jターンの方、いろいろな方たちがふえて定着率が上がっていくためには、地元の話なんかを聞いていても、住宅の問題だとか用排水等の生活環境の整備だとか、あるいは、何といっても生活していけるだけの仕事があるかということ、特に通年的に安定的な所得があるかどうかというようなことが非常に大きなネックになっていて、夢破れてということにならないように、ぜひ地域のインフラを整備していく必要があるだろうというふうに思っております。 そんな意味で、地域のインフラ整備等についてぜひしっかりやっていただくように、大臣の御見解を伺いたいと思います。 ○武部国務大臣 林業生産の安定ということが不可欠な要素であることは言うまでもありませんけれども、やはり一番大事なのは共通する社会基盤の整備、今生活環境の整備ということをお話しされましたけれども、いつでもどこでもだれでもが同じ条件下で生活できる、あるいは仕事ができるという一種のプラットホームといいますか、そういうものを構築して、都市と農山漁村の共生、対流という構想を私ども考えているわけであります。そういったことをつくり上げていく過程で、Iターンというものがどんどん進んでいくのではないのか。そして土日、ウイークエンドは山村からさっと六本木に走っていける、そういうようなことが可能だと思いまして、その環境づくりに最善を尽くしていきたい、かように考えております。 ○後藤(茂)委員 もう一つ、人材の育成確保という点で、林業研究グループの活動、私は地域においては非常に注目をしております。今、全国で林業研究グループは何グループあって、大体会員数はどうなっているのか、教えていただけますでしょうか。 ○中須政府参考人 いわゆる林研グループと言われております林業研究グループ、林業経営者を中心として、林業に関する技術、知識の習得等を目的とした学習活動だとか交流活動、こういうことを行っているわけであります。平成十三年二月現在、全国で千八百八十六グループ、会員数で申しますと三万四千二百五十七名、こういうふうに伺っております。 ○後藤(茂)委員 そして、話を聞いていると、女性が大変ふえてきているということだそうでありまして、これは地域づくり、地域の中での活動としては大変いいことだというふうに思っているわけです。 南木曽町というのがあるのですけれども、ここに南木曽町林業研究クラブというのがありまして、昭和五十二年に山と人間を復興しようという目標を立てまして、まず最初は長男が六人、若い人たちが集まってつくったものがどんどん大きくなってまいりまして、数十名に及ぶ活動体になっております。 これは例えば、キノコをつくってそれを教えたり、自分たちでつくって小学校の給食に提供したりとか、例えば枝打ちの講習会を行うとかというような、そういう山村の技術とか地域おこしの活動もやっていますけれども、あわせて水源の里体験実習という交流事業もやっていまして、名古屋から多くの方たちがやってきて、その交流事業をもう既に十年間十回もやっています。 彼らの話を聞いていると、都会から来た人たちが自分が手入れした山が毎年どういうふうに変わっていくかというのを見に来るのが楽しみだということで、多くのリピーターが来て、彼らには手づくりの豚汁を出して、決して使い捨てのカップとかいうものを出すのではなくて、地元のろくろの器で豚汁を食べてもらって持って帰ってもらうとか、こういう非常に具体的で地味な話ですけれども、ホスピタリティーを高めてやっているわけです。 こうした地域のグループが全国に千八百以上あるわけでありまして、こうした地域の林研グループの活動について、ぜひこの場で大臣から励ましの言葉をいただきたいというふうに思います。 ○武部国務大臣 いわゆる林研グループにつきましては、本当にさまざまな活動をしていただいておりますし、単なるボランティアというような範疇を超えて、私はそういったところで頑張っている人たちというのは、そこで頑張る環境も、おいしい水、きれいな空気、美しい自然、新鮮な野菜いっぱいの、そういう環境だろうと思うのですけれども、それ以上にそういった林業研究グループの皆さん方の心というのは、本当に美しい心、すばらしい全体をしっかり見据えた皆さん方だろうと思います。 そういう人々を育てるということが、私は、そのグループを育てるということよりも、そういう気概を持った方々の活動を助長する、そのことは将来の日本にとって非常に大きな成果を生むのではないか、かように考えまして、私ども、そういった方々を支援する、むしろ一緒にやってまいりたい、そういう気持ちでございまして、ぜひ先生からも身近な方々に私がきょう申し上げましたことをお伝えいただければありがたいと思います。一生懸命頑張ってまいります。 ○後藤(茂)委員 ありがとうございます。 それから、もう一つ具体例を申し上げますと、諏訪に落水川を考える会という河川とか湖の浄化のグループがありまして、具体的に何をやっているかというと、その一つに、木炭による河川や湖の浄化に取り組んでいます。例えば木炭について、炭についていえば、すき間に汚れがうまく入ってきれいになるとか、あるいは汚れを分解する微生物がすき間に住んで水を浄化するだとか、いろいろな効果があるというふうに着目して、炭を水に入れたりして熱心に活動に取り組んでいるわけです。 恐らく、森林総合研究所のもとで技術研究組合がつくられてこの問題について研究をしていたと承知していますけれども、その研究の成果について伺いたいというふうに思います。 〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕 ○中須政府参考人 ただいま先生御指摘のとおり、昭和六十一年度から四年間、木材炭化成分多用途利用技術研究組合、これは平成六年に解散をしておりますが、試験研究を実施いたしました。 その結果といたしましては、御承知のとおり木炭は多孔質で、表面に不純物等を直接吸着する能力、それと微生物の生育にとって良好な環境を提供する、そしてその良好な環境に住んでいる微生物が有機物を分解するということで、水質浄化材として有効である。つまり、吸着と同時に微生物を育て、微生物が有機物を分解する、そういう意味で二重の効果を持っている。 具体的には、透明度を高める、あるいは化学的酸素要求量の改善、アンモニア性窒素の低減、こういうものに顕著な作用がある。ほかにもいろいろございますが、そういう具体的な指摘、知見が得られているわけであります。 これを受けまして、この成果を全国の自治体等に流しまして、今先生が御指摘のあったことを含めて、木炭を利用した水質浄化の取り組みがかなり幅広く推進をされているという状況でございます。 今回も、先生からの御質問があるということで、全国での取り組み状況、主なものを並べただけで紙一面が細かい字でいっぱいになるくらいの多様な試みがなされているということでありまして、御紹介する余裕はございませんけれども、大変各地で、各地のボランティア活動等によって木炭を利用した水質浄化の試みが成功をしている、こういうふうに受けとめております。 ○後藤(茂)委員 それでは、次に木材産業の話に少し移りたいと思いますけれども、木材産業の実態等、その対応の緊急を要することについては本会議でも割合に時間を割いて申し上げたところであります。 時間もありませんので、その部分については繰り返しませんけれども、非常に木材価格が下落してきている中で、外国からは非常に末端で利用のしやすい形の木材が安く入ってくる。木材産業の経営というのは限界まで追い込まれていると思うわけですけれども、どのような具体的な対策を講じていくこととされているか、再度大臣に伺いたいと思います。 ○武部国務大臣 我が国の木材産業は、今日まで、住宅着工の減少、輸入製材品のシェア等の拡大により厳しい状況にあるわけでありますけれども、各関係者の連携強化や、意欲的な取り組みを行う企業、地域への重点的支援等を通じた木材産業の構造改革を推進していかなければならない、かように思います。具体的には、乾燥材等の供給体制の整備や加工、流通体制の拠点施設の整備等による木材の安定供給体制というものに支援していかなきゃならない、かように思っております。 農林水産省の支援策についても、ともすると今までは、民間企業であればさまざまな制約を受けるというようなことがございました。しかし、その地域で牽引力になっているところに支援をしなければ大きな前進はない、かように思いまして、木材産業の体質強化というものに新たなる視点で取り組んでいく必要があるんじゃないか、かように考えております。 ○後藤(茂)委員 加工、流通、一体的に取り組まなきゃならないと思うわけですけれども、製材や合板の加工なんというのは、これはもう明らかに農水省、林野庁の所管であるとみんな思っているわけですけれども、具体的になってくると、例えばパーティクルボードは農水省ですね、ファイバーボードになると経済産業省ですね、机、いす、テーブルなどの木工品になると経済産業省ですねとか、いろいろ所管についても分かれているわけであります。 それからもう一つは、経済産業省の方では中小企業対策というのをやっていまして、そういう意味では、従来から政策のはざま、そして所管のはざまに入って、木材を中心に、木を中心にしている木材産業というものが非常に分断された状況で、言うなればみんなが見合っている間にぽてんヒットがぽとんと落ちるということになりかねないというふうに思っているわけです。 もちろん、産業に対する政策ツールというのは、金融とか補助金だとか、非常に限られた政策ツールしかないのかもしれません。しかし、どういうふうなビジョンに従ってどういうふうに対応していくのかということは、できるだけ前向きに取り組んでいく必要があると考えております。 その点について確認をさせていただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。 ○武部国務大臣 細かい分野については長官に答弁させますが、今先生御指摘の点についていえば、例えば、先般環境大臣と会見いたしまして、環境省と農林水産省の両方にかかわる分野について、縦割り行政をやめるために、少し若い役所の職員を相互に出して早速協議会を設けさせたりいたしております。したがいまして、今お話がありました点につきましても、今後経済産業省と同じような方式でぜひ前向きに検討してまいりたいと思います。 森林・林業基本計画の策定におきましても、木材産業の事業活動等に関する指針等を定める予定でございます。これに基づきまして、本年度に木材産業体制整備の基本方針を策定いたしまして、先生お話しのような木材産業のビジョンというものを示す予定でございます。 先ほど来さまざまな議論がありますように、下からの積み上げじゃなくて、やはりきちっとした戦略とかビジョンとかそういうことに基づいて、農林水産省独自にやるべきもの、あるいは他の省庁と連携をとって、場合によっては協議会等を設けてプロジェクトチームなどをつくって進めていくもの、そういうことを私どもこれから新しい考え方に立って進めていきたい、かように考えている次第でございます。 〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕 ○後藤(茂)委員 一つ伺いますけれども、木材産業という法律用語は、今回この基本法で初めて法律的には使ったというふうに思いますが、いかがですか。 ○中須政府参考人 この法律で初めてでございます。 ○後藤(茂)委員 私は大変結構なことだというふうに、きょうは評価しっ放しかもしれませんが、評価しているわけでありまして、せっかく基本法に木材産業という言葉を書いたわけですから、そういう意味では、木材産業という形で産業政策を林野庁、農水省がしょっていくというつもりでぜひやっていただきたいというふうに思います。 それから、先ほど大臣の方から木材産業ビジョンというようなものをつくるという話がありまして、大変それもやっていただきたいことだと思っておりますけれども、森林・林業基本法ができて、それに基づく基本計画というのがあって、それを具体化する形で、例えば森林法上の森林計画だとか、基盤法上の基本方針だとか、労確法上の基本方針だとか、いろいろそういうものがあります。 そして、林産物ということも、基本理念、三条に書かれているわけでありますから、そういう意味では、そういう横並び意識を持った木材産業ビジョンというのをぜひつくっていただきたいと思いますので、その部分についてだけ確認をさせていただきたいと思います。 ○武部国務大臣 お説のような努力をしてまいりたいと思います。 先ほど私は民間の木材産業のことも申し上げましたのは、協同組合とかそういうことだけじゃなくて、木材産業そのもの、こういったところに力をつけていかなければ、それに波及する素材生産も生きてこないわけでありますので、私は地元でそういった経験を体験しておりますし、積んでおりますし、先生御指摘のようなことを踏まえて努力していきたいと思います。 ○後藤(茂)委員 一つ簡単に伺いますけれども、間伐材とかいろいろな木材資源を利用してということで、私も前回バイオマスエネルギーの話をしましたし、その後、多くの委員が話をされていますので、もうそのことについては触れませんが、公共事業、土木関係に、自然の中の景観ということからいえば、コンクリートの打ちっ放しが随所にあるよりも、ぜひ丸太を使ったりしていくというような話も出ておりますけれども、保安林や林道については、大臣の足元にありますから心配しておりませんが、国土交通省に対しまして具体的に何かアクションをとられるおつもりでしょうか。 ○武部国務大臣 小泉内閣の一つの新しい流れ、特徴というのは、人と自然との共生ということをうたっていると思います。また、循環型社会の構築ということも、これは私どもだけの考えじゃありません、小泉内閣の一つの新しい方向づけでございます。また、先般の骨太の方針の中でも、都市と農山漁村の共生、対流ということも明記されました。 さような意味では、国土交通省とも、人と自然との共生、自然共生型の公共事業、施設づくりというようなことについて、積極的な協力関係を構築することができるんじゃないか、私はかように思いまして、公共土木事業におきましても、間伐材の利用などを含めまして、相当な協力関係が拡大していく、かように確信をしております。 ○後藤(茂)委員 本会議でちょっとお話ししたことですが、九州・沖縄サミットにおいて違法伐採も問題になりました。環境保全の観点からこれを議論するということは、もちろんこれは重要なことは言うまでもありませんけれども、貿易ルールづくりを通じて木材市場の国内需給の調整が結果として図られるということは、これはもう否定のしようのない事実でありまして、これまでどういう議論を行ってきたのか、今後こうした観点から戦略的にどういった取り組みをしようとしていかれるのか、その辺についてお話を伺いたいと思います。 ○武部国務大臣 昨年沖縄で開催されましたG8首脳会合におきましても、違法伐採に対処する最善の方法についても検討するという旨合意をされ、コミュニケが公表されたわけでございます。先生御案内のとおりでございます。 木材輸入国である我が国としては、違法に伐採された木材は使用すべきでないとの考え方に基づきまして、違法伐採を撲滅する方策については関係省庁と共同して検討してまいりたいと思いますし、WTO交渉においても、現在のルールのもとで許容される貿易制限の可能性につき検討してまいりたい、かように思います。 ○後藤(茂)委員 国有林野の問題についてちょっと伺いたいと思いますが、国有林野、これは世界遺産に登録された屋久島を初めとして、非常に貴重な野生の動植物が生息する豊かな森林生態系を維持している森林が多く残されているわけです。 例えば、従来からの保護林の制度に加えて、十一年度から、緑のコリドーの設定によって生物多様性の保全を図ることとされていますが、その設定に当たっては、民有林との調整も必要ですし、特に環境行政と連携を図っていくということが重要だと思います。今の緑のコリドーの設定作業の進捗状況を伺いたいというふうに思います。 ○中須政府参考人 国有林野の機能というものを公益的機能重視に転換をするその一つの具体的なあらわれとして、ただいま御指摘のございました緑のコリドーの設定ということに取り組んでいるわけであります。 平成十二年度には、各森林管理局ごとに、有識者、関係道県等の意見を踏まえて、御指摘のとおり、民有林あるいは環境行政との調整ということにも十分配意を図りながら回廊の設定方針を定めて、具体的な設定手続を進めてまいりました。 本年四月一日現在、全国の国有林野におきまして、知床半島から奥羽山脈、長野県内の雨飾、戸隠など、十カ所において緑の回廊を設定したところでございます。 今後は、このとりあえず設定した緑の回廊について、希少な動植物等がどういうふうな動き方をしているか、そういうようなモニタリングを行うとともに、また、そうしたことを踏まえつつ、現地の状況をさらに踏まえながら、必要な箇所についてさらにこれを拡大をしていくということで取り組んでまいりたいというふうに考えております。 ○後藤(茂)委員 国有林野については、改革二法が通って、今、例えば木材生産機能の重視から公益的機能を重視していくとか、あるいは簡素で効率的な実施体制を確立していくとか、累積債務の処理の問題とか、非常に厳しい中で改革の努力が進んでいるわけであります。 そうした中で、材価が非常に下がってきまして、国有林野の収支も非常に苦しくなってきているわけであります。民有林についても、こうした材価が下がってくることや労働の条件だとか、いろいろな問題について国の支援措置が今後進んでいくわけです。 そういう国の支援措置が民有林に対しても進んでいくのとやはり一体的に考えて、国有林野特別会計へ一般会計から繰り入れてやる金についてもやはり予算上配慮していかなければならないというふうに思っております。もちろん、いろいろな予算関係の問題はありますけれども、国有林野特別会計へ一般会計からの繰り入れをふやしていくべきだというふうに考えております。 農水省としての御見解を伺いたいというふうに思います。 ○武部国務大臣 国有林野事業におきましても、新たな森林・林業基本法の趣旨を踏まえまして、森林の多面的機能の持続的発揮を図るために必要な経費等については一般会計から繰り入れてまいる考えであります。 ○後藤(茂)委員 終わります。 |